市内上本郷地域には「七不思議」と呼ばれる言い伝えがあります。
・斬られ地蔵
むかし覚蔵院で盆踊りがあった時、見知らぬ男が見事に踊っていた。娘たちは見とれてしまい村の男たちは面白くなかった。酒が入っていたこともあり村一番のけんか早い男が刀でその男を斬り付けたところ、不思議なことに火花が散った。そして、大男は悲鳴をあげて暗闇の中に消えてしまった。翌朝、村人が後片付けに訪れると、境内の石地蔵の胸に生々しい刀傷が残っていた。「昨夜の大男はお地蔵様だったのか」「これは大変なことをした」と、みな震え上がり、地にひれ伏して謝った。
(覚蔵院は現存せず、お地蔵様は本福寺境内に安置)
・ゆるぎの松
上本郷の花台に樹齢200年の良い枝ぶりの松があった。近くを通りかかった水戸黄門が松の幹をなでると、生き物のようにゆらゆら揺れ動いた。黄門は松に「ゆるぎの松」と名付けた。
(松は現存せず、上本郷2275の墓所付近に石碑あり)
・風早神社の大杉
風早神社境内に周囲3メートルほどの杉があった。この木の影は長く伸び、二ツ木村まで達した。二ツ木村では杉の陰のため田の実りが悪かった。そこで巫女にお伺いをたてると「この田で獲れた米を風早神社に上げよ」とのお告げがあり米を奉納したところ、米がよく採れるようになった。それから毎年奉納するようになったが、ある年に忘れたところ米が不作になり、再び奉納するようになった。
(本殿裏にある杉は平成8年植樹の二代目)
・二つ井戸
井戸が2つ並んでいた、片方が澄んでいると片方は必ず濁っていたという。昔からこの付近では「二つ井戸」があるので他に井戸を掘ってはいけないとの言い伝えがあった。
(北松戸東口正面の坂を上り左側、井戸は区画整理で消失、北松戸2丁目7-3に石碑あり)
・富士見の松
本覚寺の南に松の老木があった。この松は富士山の見える西に枝を伸ばしていたので「富士見の松」と呼ぶようになった。
(松は枯死、切株も境内南斜面の防災工事により現存せず)
・八百比丘尼
風早神社前の六軒新田(現:上本郷駅付近)の6人が長者屋敷の庚申講に呼ばれた。出かける前に一人が屋敷のぞくと人魚を料理していることが分かった。6人は相談して料理は食べず帰りに捨ててしまおうということになった。ところが1人は耳が遠くかったので相談の話がわからず人魚の肉を持ち帰り娘に食べさせた。その娘はいつまでも若いままでなので比丘尼となって若狭の国に住んだ。後に若狭に旅をした千駄堀の人が800歳になった比丘尼に出会ったという。
・官女の化けもの
むかし雷(いかずち)神社が祀らたいかずち山に赤い袴を付けた官女の化けものが夜な夜な人々を驚かせたという。いかずち山は龍善寺の付近らしい。この山を所有した人は家運が衰えたという。
(明治神社の社殿左側に奉納された「雷電宮」と刻んだ石が雷神社のものとされる)